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6日め  ブライスキャニオン → ザイオン(132.2km)

 

暖房を入れてたおかげで朝までぐっすりと休むことができましたが、目が覚めると軽い頭痛がしました。グランドキャニオンでもそうでしたが、標高が高いため、軽い高山病になっているのでしょう。高地にいることを実感します。頭痛そのものは気になるほどではなく、時間とともになくなってしまいました。

周りはまだ真っ暗で、外に出ると、昨日と同様、満天の星空です。吐く息が白く、ピント張りつめたような冷気に満ちています。寒いはずです。温度計を見ると、氷点下4℃を指していました。

このキャンプ場では、もっとゆっくりしたかったのですが、早々に準備をすませ、東の空が明るくなるとともに出発、朝日を見るために、ブライスポイントに向かうことにしました。ブライスポイントへは、10分ほどで到着、すでに何台かの車が止まってましたが、こちらもRV車専用駐車スペースに難なく停めることができました。シーズン中はどの駐車場も車がいっぱいになるそうですが、さすがにこの時間なら楽勝です。

ここでちょっとしたハプニングが起きました。車を停めてエンジンキーを抜こうとするのですが、何故かなかなか抜けません。前も時々同じようなことがあり、再度エンジンをかけたり、車を動かしたり、ステアリングを動かしたりしてたら抜けてたのですが、この時ばかりは何をしても抜けません。

少し無理してステアリングを動かしたところ、がくっという衝撃とともに、エンジンキーもステアリングも完全にロックされてしまい、全く動かなくなってしまいました。一瞬途方に暮れてしまいました。が、せっかく朝日を見に来たのだから、車のことは後回しにして、とりあえず朝日だけは見に行くことにしました。展望台までは歩いてすぐ、車のことが気になりながらも、やはり朝日はきれいです。

東の山から太陽が顔を出すとともに、フードゥーがピンク色に染まりだし、刻々とその色を変えていきます。気がつくと大勢の観光客が周りにたくさんいます。フランス人のバスツアーのようです。ここにもアメリカ人はあまり来てないようでした。

   

氷点下に近い肌寒い中しばらく景色を眺めてましたが、やはり車のことが気になり戻ってみましたが、全く動きません。ツアーで来てたバスの運転手に見てもらいましたが、「わからない。専門家に見てもらった方がいい」とのこと。

携帯で誰かと連絡を取ろうにも、こんな時に限って充電切れです。携帯なんてまさか使うことになるなんて思ってもなかったので、こちらに着いてから一度も充電をしてませんでした。

何とも困ってしまったのですが、逆にこれが不幸中の幸いでした。隣の車の人に携帯を借りて、とりあえずLos Angelesと連絡を取ろうと思ったのですが、そこの御主人が「俺が見てやる」とのことで運転席に座り、なにやらしてるうちにロックが解除され、元の状態に戻ってしまいました。

どうしてこうなったか説明してくれたのですが、あまりの嬉しさに上の空で、結局何がどうなっていたのかわかりませんでした。それでも無事に車が動くようになったのでほっと一息、お互いに記念写真を撮って、お別れしました。地獄に仏とはまさにこのことですね。

「最悪、明日の夜までにLas Vegasまでたどり着けばいいか」と思い始めていたので、本当に助かりました。とりあえず晴れやかな気持ちになったところで、もう一度展望台まで戻って、さっきの景色を改めて眺め直しました。

陽が高くなり、フードゥーの下の方まで陽の光が差し込み、先ほどよりも明るくまぶしい景色に変わっています。気温も少しずつ上がってきて、空気の刺すような冷たさが無くなってきました。ほっとしたところで、お腹もすいてきましたので、この駐車場で、このまま朝食ということにしました。何を食べたか良く覚えてませんが、お茶漬けを作ったり、パンを焼いたりしたような気がします。

朝食が終わったところで、サンセットポイントへ移動し、これからナバホループトレイルをトレッキングする予定です。ここの駐車場は有名なトレイルヘッドになっているためか、今までの二つよりかなり広く、RV専用帯も多くありました。

展望台までは歩いてすぐ、ここから下の方をのぞくと、続々と人が谷の下へ降りていくのが見えます。まだ8時半過ぎだというのに、登ってくる人もたくさんいます。このトレッキングは、今回の旅の中でも最も楽しみにしてた計画の一つです。私たちも谷底まで降りてみることにしました。

   

最初のうちはつづら折りの道をひたすら下っていきます。道が狭い上に、思ったよりも人が多く、すれ違うたびに道をお互い譲り合う必要がありました。高地(富士山の7合目くらいの高さがあります)なので酸素が薄いことを意識しながら、先を急がずゆっくりと降りていきました。

下まで降りて上を見上げると、一つ一つのフードゥーの巨大さに改めてびっくりしました。下まで降りてみないと、Bryce Canyonの本当の良さはわからないとガイドブックに書いてありましたが、まさにその通りだと思いました。上から眺めただけでは、このフードゥーの大きさは絶対に実感できません。まさに見上げるような高さです。

下まで降りてしまうと、しばらくは緑の多い平坦なコースを歩きます。Bryce Canyonというと奇妙な岩山だけという印象でしたが、実は結構木々も多く、下まで降りてしまうと周りに茶色のフードゥーを見ながら、緑の中を歩きます。この時間になると少しずつ気温も上がり、寒さはなくなってきました。

本当はクイーンズガーデントレイルを経由してサンライズポイントまで歩きたかったのですが、時間の関係で、分岐点を左に折れて、そのままループトレイルをサンセットポイントに向かって歩くことにしました。ここからは再び上り坂です。

登りは少しきついかと思ってましたが、反時計回りに歩くと、帰りは周りの景色が開けてる場所が多いので、景色を眺めながらあっという間に終点に着いていたという感じでした。標高差約160m、時間にしてちょうど1時間半、予想していたとおり気持ちのいいトレッキングコースでした。

    

再び、Ruby’sのRV Parkオフィス前の駐車場に戻ってきました。ここは駐車場が広々としてるので好きなところに停め放題です。大型観光バスくらいの大きさのキャンピングカーの後ろに普通車を牽引し、さらにその後ろに自転車を何台も結びつけたキャンピングカーが何台も停まってましたが、およそ日本では見られない光景ですね。

 

今日の宿泊地ザイオンのWatchman RV Parkには、シャワールームもランドリーもないということでしたので、これからシャワーと洗濯をすませてザイオンに向かうことにしました。

まだチェックアウト時間の11時前なので、昨日のCode Numberが使えます。洗濯機を回してる間にシャワーを済ませ、さっぱりとしたところでザイオンに向けて出発です。今日は移動距離がこの旅行中一番短い130kmくらいなので、昨日までとは違い、のんびりと移動を開始しました。

Mount Carmel junctionまでは昨日と同じ道を走り、1時間弱で到着、ここで給油をし、昼食を摂ることにしました。今日の宿泊地は、上下水のフックアップができないところでしたので、昨日ウォータータンク内の水は満タンにしてたとはいえ、水をなるべく節約したかったことと、グレイタンクもなるべく空にしておきたかったので、今回初めてお昼ご飯を外食にすることにしました。

ちょうど交差点の角にモーテル(Best Westernだったと思います)に併設されたレストランがあり、そこに入りました。アメリカに来ればやはりハンバーガーを食べないと始まりません。少し高かったですが、美味しかったです。

  

お腹がいっぱいになったところで、今日の目的地Zion Canyonに向けてUS-89からUT-9を右折し、Mount Carmel Highwayを西へ向かって走り出しました。走り出すとすぐに、周りの景色がごつごつとした岩山に変わります。

US-89は緑の多い山道でしたが、こちらは目の前まで見上げるような岩山が壁のようにそびえ立ち、荒々しい感じです。さらに奥へはいると国立公園東口ゲートがあり、ここで今日この先にあるトンネルを通るかどうかを聞かれます。

二つめのトンネルは離合が困難なため、レンジャーの誘導による片側交互通行が必要で、RV車に乗ってる場合、15ドルの通行料が必要とのことでした。15ドルを払うと通行証明書のようなものをくれ、フロントガラスに貼っておくように言われました。もちろん、National Park Annual Passで入場可能です。

今回の旅行では3回しか使わなかったので、料金的に元は取れなかったけど、きれいなカードなので、記念品として、いい思い出にはなります。ここから先は、岩山が道路のすぐ脇までせり出し、道も細く、カーブも多くなります。

観光バスも通っているくらいなので、通行は難なく可能ですが、やはり気を遣います。普通車に比べると、当然スピードが出せませんので、すぐに後ろに並ばれますが、路肩に駐車スペースを見つけたら、すぐに停まってゆっくりと写真を撮りながら休み休み進みました。

様々な形や色をした巨大な岩が次々と目の前に現れ、有名なチェッカーボードメサも目の前で見ましたが、他の岩山も大きいので「ああ、これか」という感じで特別な感動はありませんでした。

   

一つめのトンネルを通過ししばらく行くと、二つめのトンネルの直前にCanyon Overlook Pointへ行くための小さな駐車場があります。ここには是非寄りたかったのですが、ガイドブックによるといつも混雑していてなかなか駐車できないとのこと。

今の時刻が14時過ぎということと合わせると「たぶん無理だろう」と思ってたのですが、駐車場の少し手前にある右側の路側帯に乗用車二台が縦列駐車できるスペースがちょうど空いているではありませんか。

このわずかなスペースに道路にはみ出さないように何回も切り返しながら、巨体を滑り込ませ、何とか駐車することができました。ここからCanyon Overlook Pointまではゆっくり30分弱のトレイルです。

    

初めは急な山道を登りますが、後は比較的平坦な道を進みます。このトレイルは非常に暑く、今まで歩いてきた中で一番水を消費しました。突き当たりの岩の頂上からは、キャニオンの南側を東側から見下ろす形となり、眼下に雄大な景色が広がっています。

これから走るヘアピンカーブが連続した道路を走ってる車が、遙か下に、ミニカーのように小さく見えます。目を上げると、壁のような岩が周りを囲んでおり、もう少し目線を上げると、雲一つ無い真っ青な青空です。いつもの事ながらこの色彩のコントラストの美しさに言葉もありません。

ザイオンは、高い所から渓谷の中を見下ろせる場所があまりなく、それこそAngeles LandingとかObservation Pointまで往復6~7時間かけてハイキングしないといけませんが、ここは、往復1時間くらいで簡単に行けるし、観光客も少なく、お勧めの場所です。駐車場が狭いのが難点ですが・・・。

車に乗り込み、レンジャーの指示に従って狭いトンネルの中に入ります。もちろんトンネル内にライトはありませんが、所々で岩に窓が作ってあり、そこから光とともに、きれいな景色が見えます。

トンネルを抜けると、ヘアピンカーブが連続し、道は一気に下っていきます。先頭車だったので、後ろの車に気を遣いながら走らなければならず、ゆっくり景色を楽しみながらというわけにはいきませんでしたが・・・。

シーニックドライブとの分岐点を過ぎしばらく走ると、左にビジターセンターの入り口があり、そこを左折、右手にビジターセンターを見ながら直進し、奥の方に進むと、Watchman RV Parkの入り口があります。

ゲートで予約してる旨告げるとサイトを教えてくれました。このキャンプ場も今日は満車になってました。ここは一台一台のスペースはそう広くはありませんが、周りの岩山の景色が雄大で、いかにも国立公園の中のキャンプ場といった雰囲気です。

すぐ近くをバージン川が流れており、水量も少なく、子供達だけでも安心して遊べます。大人たちは、子供達の様子を見ながら、今朝Bryce Canyonで洗濯してきた洗濯物を干したり、夕食の準備をしたりと、しばらくのんびり過ごしました。

   

   

私はせっかくなので、一人でWatchman Trailを歩いてくることにしました。子供達も誘ったのですが、川遊びの方が楽しそうです。時刻は17時半になり、この時間になると日中の暑さはなくなり風もさわやかです。

Watchmanとはビジターセンターのすぐ裏にそびえる大きな岸壁ですが、その途中まで登ることになります。私自身、今日3本目のトレイルです。さすがに夕方陽も落ちてくる頃なので人も少なく、一人の気楽さもあって、静寂の中を早足でただひたすら歩きました。

最初はバージン川沿いの遊歩道を、夕陽でオレンジ色に輝くWatchmanを目の前にしながら歩き、途中からはこの壁沿いに登っていくというコースです。往復2時間とありましたが、30分足らずで展望所まで着いてしまいました。

ここから見るザイオンの景色もまた格別でした。背後にはWatchmanが、目の前にはTowers of the Virginがそびえ立ち、北側のキャニオンからSpringdaleの街までが眼下に広がっています。緑に囲まれたWatchman RV Parkがかなり遠くに見え、こんなに歩いたのかとびっくりしました。

やがて目の前の大きな山の向こうに太陽が隠れてしまいました。写真撮影をしている人が一人いましたが、それ以外は何の音もしない静かな世界が広がってます。ここでも飛行機雲が幾筋も流れていきます。一人静かに、ここまでの旅を振り返ったりもしましたが、さすがにこの時期になると、そろそろ日本に帰らなければならないこと、仕事に戻らなければならないこと等、ブルーな気持ちも少し入ってしまいました。

1時間くらいぼーっと景色を眺めてたでしょうか、少しずつ周りが暗くなり始めたので、山を下りることにしました。帰りは下りなので足取りも軽快です。やはり30分足らずでキャンプ場まで帰ってきました。ゆっくり歩いても片道40~50分くらいでしょう、特に夕暮れ時の散歩がお勧めと思いました。

   

車に戻ると、川遊びをしてびしょ濡れになった子供達の洋服が山積みになっており、これをトイレ横の水道まで持って行き、簡単に手洗いだけして、洗濯ひもに干しておきました。

このキャンプ場にはシャワールームが無く、必要な人は近くのキャンプ場まで浴びに行くそうですが、そこまではせず車の中のシャワーを利用しました。といっても空気がとても乾燥してるので、シャワーを浴びなくてもべたっとした不快感は全くありません。

干している洗濯物もすぐに乾いてしまいます。また、下水もありませんので、タンクの中の下水は今日はこのままです。今日の夕食は洗い物をなるべく少なくということでスパゲッティーにしました。

今日はたくさん歩いたのでお腹もぺこぺこでした。明日の夜はLas Vegasで外食をする予定にしてるので、車の中で食べる夕食は今日が最後です。そう考えるといよいよ旅が終わりに近づいてきてるなと、少し寂しく感じたりもしました。

今日は久しぶりに快適な夜で、ここ数日の寒い夜とは違います。ジェネレーターの調子が悪いのですが、クーラーを入れるほどの暑さではありません。明日は朝日を見る予定もないので朝は思いっきり朝寝坊をすることにして休みました。朝日を見ないのは、この旅行で明日が初めてです。今までよく早起きしてたもんだと、我ながら感心してしまいました。

  

 

★ ザイオン Watchman Campground

(ドライサイト:電気のみのサイトですが、排水、給水もサイトの中にあります。

 グランドサークル最後の夜に相応しい壮大な自然の中で満喫してください。)

http://www.nps.gov/zion/planyourvisit/watchman-campground.htm

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